白隠禅師は、江戸時代に日本における臨済宗の中興の祖と呼ばれた人です。
この白隠禅師の教えは、わかりやすくユーモアに満ちているので庶民に愛され、”白隠さん”と呼ばれ親しまれていたそうです。
一休さんを彷彿させますね。
ある時、1人の武士が白隠禅師に向かって
「地獄、極楽というものは、一体どんな処でござろうか?」
と尋ねました。これに対し白隠さんは、
「そのようなことがわからぬとは、貴殿は大バカものでござるな。いや、バカものどころでない。肚のできておらぬ腰抜け武士でござるな」
と言いました。その武士は血相を変え、
「何、腰抜け武士とな。これは白隠殿とて許されぬ悪口雑言」
と、刀の柄に手をかけ、あわや抜刀!というところで白隠さんは、
「それ、それ、そこが地獄じゃ。人を斬れば、自分も死なねばならぬ。これこそ、地獄というものじゃ」
と声をかけました。
「成る程」
ほっとして武士は再び腰をおろしますと、すかなず、
「それ、そこが極楽なのじゃよ」
と白隠さんはいいました。ここで、武士はハッとして、
「地獄というのも、極楽というのも、すべては自分の心のあり方が作り出すもの」
と言下に悟ったということです。
「人生に勝利する楽々禅」より
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